たとえ言葉が風だとしても~開発的ビジネス論序論~

開発とビジネスの架橋を目指した新たなシステムを議論・検討・批判する場です。

とあるバスの情景<行きはよいよい帰りはこわい>

<行きはよいよい> ちょうど昼時に入る頃、私はバスに乗り込み、展示会が開かれる街中へと向かっていた。市民の足である公共バスは当然ケニア人が利用するもので、車内で異邦人は私だけだった。積み込めるだけ乗客を積め込んだバスは、凸凹する路面にまるで…

マラソン応援とネーションビルディング~「ケニア人」と「民族」って何?~

<使い分けられるアイデンティティ> 先日カフェでご飯を食べていると、いつにもましてお客さんたちがテレビに熱い視線を送っていた。自分も気になってテレビに目をやると、ちょうどロンドンマラソンの終盤が放映されているところだった。お茶を飲みながらぼ…

警官が「権力と暴力の豚」に成り下がるとき ~道を歩けば逮捕される、ナイロビ東部の日常~

あなたはこれまで何回銃を向けられたことがあるだろうか?おそらく日本人にこの質問をしてみたところで、たちの悪いジョークに聞こえるだけかもしれない。しかし、筆者はこれまで何回もケニアで銃を向けられてきた。おそらく十回はいかないくらいだろう。そ…

TEAR GASS(催涙ガス、あるいは、人々を切り裂くガス)

社員から電話が来た。現在某中東メディアからの依頼で記事作成を進めるためケニア中を回っているが、取材費が足りなくなったようで、至急入金をしてほしいと言ってきた。今日は大統領就任式が開催され、すでにカサラニスタジアムで野党支持者と警官隊の間で…

民族・階級・正義のロジック~選挙分析の基本軸~

注:長文注意。結論部だけでも可。 先ず触れなければならないことは、前回記事で『誤報』としたケニア選挙委員会の人員入れ替えは結局不完全なまま終わり、結果として、残念ながら『誤報』ではなかったという点だ。私が前回記事で誤報とした情報が出る少し前…

ゲームのルール

本文に誤情報がありました。十分に情報を確認していなかった筆者の責任です。本稿により誤解された方、および無責任な批判の対象となった選挙管理委員会に謝罪致します。申し訳ございませんでした。訂正すべき部分にチェックを入れたので確認ください。某国…

「私はこの国に疲れてしまったよ」と、彼は言った。

穏やかな日だった。この頃続いた雨が嘘の様に去り、頭上には爽やかな青空が広がっていた。オフィスが面する路地では子供が石を蹴飛ばして遊び、通り向かいのアパートでは女性が洗濯物を干していた。溜まった家事を一気にこなすのにはもってこいな、そんな穏…

豊かな市場、脆弱化する社会

〈好調なケニア市場〉 ケニアはここ数年FDI(海外直接投融資)額がドカンと跳ね上がっている。世銀のデータを見るとそれは顕著で、2013年からの伸びはもはや驚異的というべきだろうか。 http://data.worldbank.org/indicator/BX.KLT.DINV.CD.WD?locations=KE…

2017年選挙後暴力に備えるナイロビ市民

〈避けられない危機なのか〉 弊社がWEBメディアに加えて調査事業を行うことに関しては前回記事で触れた。弊社が現在進めている調査は、新興中間層地域にあるスーパーマーケット利用者の基礎的な家計調査だ。ときに投資理由として、ときに経済成長の根拠とし…

人生で一番重い握手の話

私はケニアで会社を立ち上げ、事業を開始する直前の立場です。事業の中身はWEBメディアと調査(家計&意識調査)を行う予定で、既に取材や調査を精力的に行っており、これから情報を発信していく段階にあります。 この事業が今後ケニアにとって、日本にとっ…

ナイロビスーパーマーケットありすぎやろ問題

ナイロビの街中を歩いていると、チェーンスーパーマーケットがよく目立つ。近頃借金や給料遅配や店舗撤退が何かと話題のスーパーマーケットだが、現場を歩いていると「そりゃそうなるやろ」と思う場面もちらほら。 たとえばこんな感じである。通りの向かいに…

日本の「一人あたり国民総所得」は右肩上がり~アフリカ経済指標の誤解と曲解~

〈過熱するアフリカ報道〉 この頃はアフリカのマクロ経済を巡り、経営コンサルタントやエコノミストなど、様々なアクターが積極的に情報発信をしている。週刊誌にもアフリカ経済の情報が取り上げられることが多くなり、開発研究に関わっている筆者としてはよ…

世論調査が民意と乖離するとき~ケニアの2017年選挙考察~

〈空虚な数字〉 選挙の話題はケニアで最もホットなトピックであり、日常会話の中でも喧々諤々の議論を巻き起こしている。先日、弊社の社員と選挙に関する話題になった時、私は社員にこう伝えた。「ケニアのマスメディアが伝える世論調査で、信頼できる数値を…

「ChineseからJapaneseになる私」

私には密かに自慢していることがある。それは、「私がよく歩くエリアでは、私はJapaneseと声をかけられる」ことだ。何が何やらさっぱりな方もいるだろうが、こちらの現状を知っている方からは、「本当ですか、それは凄いですね」と褒めてくださる方もいる。…

「街に寄り添うミシンの歌」

レポートを読み込んでいると外がだいぶ暗くなっていることに気づき、いつもよりも遅めの夕食を取るために街へ出た。少々レポートの内容に夢中になっていた様だ。空きっ腹を鳴らしながら、今日はニャマチョマ(牛の焼き肉)にしようか、たまにはマトゥンボ(…

「不確実性の世界」

ドナルド・トランプ氏が大統領に就任しましたね。ブレキジットといい、現地大衆の支持が国際世論と乖離する事態が続きます。 今や世界は予測の付かないルール下でゲームを戦わざるをえない状態に陥りつつあるように思えます。現行のグローバル社会を支配する…

ナイロビ小咄20161102 「真夜中の侵入者」他2本

「真夜中の侵入者」 注:前提として、筆者はナイロビにあるボロアパートに住んでおり、窓のノブがほとんどぶっ壊れていて、人間以外はフリースルー状態です。そんなアパートでの出来事です。 PART1 ??「ガサゴソガサゴソ」 筆者「えっ」 ヤモリ「やあ」 筆者「…

開発援助と国際協力と開発の違いとは

開発、と聞いたところで、多くの方は疑問符を抱かざるを得ないでしょう。「え、機械か何かで新しいものでも作ってるの?」と思われる方が大多数でしょうか。いえいえ、ここでいう開発とはそうした技術開発のことではなく、ざっくり説明するならば主に途上国…